女子はピンクが好き?

それぞれのRoots

ピンクやパステルカラーが、ずっと苦手だった。  

 

そういう考え方をするようになったのは、やはり母の影響が大きいと思う。母はウーマンリブの時代に大学を出て、わたしを1975年に出産し、0歳から保育園にわたしを預け、教職を続けた。日本の70年代は最も専業主婦の多かった時期だと考えると、家族を含め周りからの圧力は相当なものだっただろう。その反動のように、母はわたしに「男に媚びず、男並みに働くことは素晴らしい」と洗脳した。思想から持ち物まで、女性らしさを象徴するものを見下す傾向があった。それをわたしは「他の女子と自分は違うのだ」という優越意識と共にアイデンティティの一部として、受け入れた。

 

 

しかし2000年に社会人となり、 雑誌や雑貨 の仕事を始めてから「ピンクとパステルカラー」に悩まされるようになる。その際に必ず求められたのは「女性向け雑貨なので、ピンク系で」とか「女性誌ではピンク色の文字を表紙に使うと売上が伸びるので」というクライアントの要望である。こういうことを要求するのはステレオタイプであるし、おそらく社会的に作られたジェンダー意識から来るものではないのか、という疑問が湧いた。

 

もともと「ピンク=女性の色」という認識が広がったのは、第二次世界大戦後の戦勝国アメリカで本格的に定着するようになる。大統領夫人のスーツから、映画の中でも多用され、50年代のアメリカの「シアワセ」を象徴する色となる。その思想がそのまま日本に輸入され、日本の子供向け雑貨にまで浸透するようになった歴史がある。

 

仕事を始めた新人のころは、実績もないので「そういう企業戦略に乗ることが経済原理に従うこと、社会人として当たり前、これで生計を立てなければ…」という思いで必死だったが、5年ほどで限界を迎え路線変更をした。

 

なぜなら昔から自分と同じように、アースカラーやモノトーンといったシックな色が好きな女性が多いということも、感知していたからだ。そのように切り替えたタイミングがよく、2005年頃から『クウネル』(マガジンハウス)や『天然生活』(地球丸)といったシックな毛色のライフスタイル誌が次々と刊行され、それらを中心に仕事が舞い込むようになった。この20年ほどで、そのように時代が変わってきたことを肌で感じた。

 

 

自分が好きなカラーで仕事ができるようになってから、なぜ自分がピンクを毛嫌いしているのか、考えるきっかけがあった。それは「岡田謙三」という50年代の抽象絵画に出会い、その絵が大変美しく、感銘を受けたからだ。しかし、岡田の絵はわたしが毛嫌いしているピンクやパステルカラーを多用しているのだ。「おや?もしかしたら、わたしはピンクやパステルという色、そのものが嫌いなのではないのかも…」と思うようになった。

 

ピンクやパステルカラーが生理用品、幼児玩具、赤ちゃんの産着など、何かにつけて「女性らしさ、優しさ」を象徴するものに多用されている。そのイメージそのものが、自分が嫌悪している理由ではないのか、ということに気が付いた。それは、わたしの中にある「女性らしい=依存的=愚か」という図式を思い浮かばせ、どうしても好きになれなかったのだ。本来のわたしは、かなり依存的な人間でもあるし、それを上手く肯定できずに男性にも頼ることが苦手だった。それを反映していたのがピンクであり、パステルカラー、なのかもしれない。

  

 

それ以来、「ピンクとは何か」を深く考えるようになった。社会の中でピンクの使われ方や洗脳に敏感になった。そのうち「女子がもともとピンク好きなのは遺伝だ」とかその正誤について考えるよりも、自分が作品の中でピンクやパステルカラーをいかに自分のモノとし、どうすればカッコよく使えるのかを模索するようになっていった。その方が今のわたしにとっては重要である。 

 

 

※参考文献 『Think pink ! 女の子は本当にピンクが好きなのか』堀越英美著  (ele-king books・2016)