母の針江だより

それぞれのRoots


わたしの両親が終の棲家として選んだ場所は滋賀の湖北にある「針江」という湧き水が出る美しい村です。
 

母はこの家に越した年に定年退職し、友人や職場の仲の良かった同僚に、厚かましくも!!『新築祝いはいらないので、“樹木”をプレゼントして下さい』と書かれた手紙を送りつけました。畑の見取り図と、彼らの希望も添えてありました。 

 

もちろん、わたしたち夫婦の家にも届きました。この“樹木のプレゼント”を贈った人は「井上家」に遊びに来て、木に生る果実を採って食べても良い権利が与えられるというオプション付きでした!ちなみにわたしたち夫婦は自分たちの苗字と同じクスノキを贈りました。(実はならない…でもいい匂いがする)


それから季節ごとに、畑の収穫物写真や、それらを使った手料理、自分たちの暮らしぶりを記載した『針江だより』なる通信が送られてくるようになりました。(こういうところが元教師っぽい…笑)なので、今はどの木や花が見ごろで、どんな実や収穫物があるか、すぐ解ります。母の手料理も含め、みなさんが楽しみにして家に遊びに寄ってくれます。退職して何年も経つのに、隔週で友達が遊びにやってきます。美味しいものを振る舞ってくれるひとのまわりには、ひとが集まる、というのはどんな場所でも同じだな、と思います。



あんなに仕事が大好きだった母が退職し、朝から晩まで畑仕事をして、ほんとに何だか素敵な雑誌から抜け出てきたような暮らしをリアルに実践するようになるとは、驚きです。 

昔から母は、自分で「これが素晴らしい!」と実感すると、それをひたすら信じてやり遂げる人です。その価値感にわたしも家族も随分振り回されましたが、それでも今は母が仕事も辞め歳を重ねても、豊にシアワセに暮らしていることを誇りに思っています。